政策提言 No.293
改革から再設計へ:21世紀の国連を構想し直す
要旨
国際連合は、財政の脆弱化、政治的停滞、制度的正当性の低下という危機に直面している。国連にとって最大の分担金拠出国である米国の未納額は数十億ドルにも達しており、国連事務総長は、未払いが続けば国連は深刻な流動性危機に陥る恐れがあり、現金準備金は2026年半ばまでに枯渇する可能性があると警鐘を鳴らした。国連システムと並行して、かつその枠外で、米国が主導する「平和評議会」のような代替的な統治プラットフォームも台頭しつつある。本稿では、国連が必要としているのは改革ではなく「再設計」であり、単なる任務と予算の再編成ではなく、インセンティブ、権限、資金調達に関する政治的な再設計であると主張する。世界のリーダーたちの見解と、制度的欠陥に対する冷静な評価に基づいて、本稿では国連を未完成の政治プロジェクトとして捉え直す。本稿は最後に、加盟国、国連事務局、市民社会に向けて、2024年「未来のための協定」を踏まえつつ果断にその先に進む、変革のための3段階の枠組みと六つの戦略的優先事項を提示する。
1. はじめに: 改革のサイクルを超えて
創設から80周年を迎え、国連は今再び改革を求める声に囲まれている。これまでも「ミレニアム開発目標」から最近の「未来のための協定」まで、国連の法的文書を近代化し、運営を改善し、成果を向上させるために、継続的な取り組みが行われてきた。事務総長の「UN80イニシアチブ」もこの流れを受け継ぐもので、組織全体にわたる改革の取り組みが国連80周年の前後に立ち上げられている。これらの努力は必要なものであるとはいえ、決して十分とは言えない。国際システムの変化はあまりにも大きく、もはや漸進的修正では対処し切れなくなっている。変化したのは世界的リスクの規模だけでなく、国際秩序形成の道筋となる権限、財源、技術力の分布も変化している。
本稿では、国連が改革のサイクルにとどまるのではなく、より抜本的な再設計のプロセスを受け入れなければならないと主張する。そのためには、国連の不可欠な役割を放棄することの前兆ではなく変革の出発点として、制度の失敗を率直に認める必要がある。それは、保全するべき完成した記念碑として国連を見るのではなく、未完成の政治的プロジェクトとして見ることを意味する。元国連副事務総長であり元国連開発計画(UNDP)総裁であるマーク・マロック・ブラウンはこれを、効果的なグローバル・ガバナンスを構築するためのいまだ未完の努力と評した。
改革は効率性に関係する。すなわち、任務の見直し、財政規律、組織の合理化である。再設計は政治的な枠組みに関係する。すなわち、根本的に異なる基盤の上で、インセンティブ構造を変更し、権限を再分配し、資金構造を再構築することである。これは、国連憲章の原則を放棄するということではなく、それらの原則が実際に施行されるための制度・構造を再設計する必要があるということだ。
この区別は、何をもって成功とするかにかかわるがゆえに重要である。改革された国連は、なおも同じ基盤設計によって統治されることになるだろう。すなわち、常任理事国、拒否権、国家中心の代表権、任意拠出金である。再設計された国連は、そのような構造上の選択を真っ向から見直すことになるだろう。再設計のために新たな憲章は必要ないが、今や憲章のいくつかの条項が、本来可能にするはずだった集団行動の足かせとなっていることを認める政治的誠実さが必要である。拒否権の構造改革、安全保障理事会の代表性の変更、資金調達に対する根本的に異なるアプローチは、技術的修正では済まない。政治的行為である。まさしくこの理由で、それらはこれほど長く先送りされてきたのだ。
2026年初頭に起きた出来事は、この議論の緊急性をいっそう際立たせている。国連は深刻な流動性危機に直面しており、現金準備金は7月までに枯渇する可能性がある。この財政的脅威は、過剰支出や行政的浪費のゆえではない。国連にとって最大の拠出国が法的に義務付けられた分担金を意図的に支払っていないことの表れである。
米国は、66の国際機関からの脱退を発表しており、数十億ドルもの国連分担金を支払っておらず、全世界の紛争解決を任務と主張する憲章を掲げて国連に対抗する「平和評議会」を発足させた。これらは漸進的圧力ではない。その維持のために国連が設立された多国間システムに対する構造的な挑戦である。その後、米国とイスラエルは安全保障理事会の承認なしにイランへの共同軍事攻撃を開始しており、国連が擁護することを意図された規範枠組みをさらに弱体化させている。
2. 国連に対する批判: 信頼性の危機を認めること
その構造的弱点を認めずに国連を擁護することは、非現実的であり、また説得力にも欠ける。ラメッシュ・タクール元国連事務次長補のような批評家らが国連のいくつかの構造的失敗に目を向けるのは、もっともなことだ。広く共感を呼んだ彼の評論は、国連の再設計を真剣に考えるのであれば正面から取り組むべき三つの際立った問題点を示している。
第1は、安全保障理事会の機能不全である。落ち度があるのは制度そのものというより最も権力のある理事国である、というのは正しいが、核心を突いてはいない。主要な安全保障機関がひと握りの国家の利害によって機能が止まってしまうような制度には、たとえその機能停止が手続きの問題だけでなく政治的な要因で引き起こされるとしても、設計上の問題がある。常任理事国5カ国の拒否権は、手続き上の行き詰まりをもたらすだけではない。不処罰が許されているとの根強い印象が広がり、安保理自体の正当性を低下させているのである。
これが一時的な機能不全ではなく持続的なパターンであることは、独立したデータでも明らかになっている。安全保障理事会報告書は、拒否権の発動がますます特定の紛争の周辺に集中するようになっており、度重なる拒否権発動により長期にわたり行動が妨害されていることを示している。シリアの事例では、安保理は最低限の集団的対応すら維持することができずにいる。それは外交的関与が足りないからではなく、たった1カ国が行動を無限に阻止することを制度的に許しているからである。政治的不一致のように見えるが、実際には構造的に機能不全が繰り返される形態となっている。
第2は、押し付けがましく、現実離れした国際官僚機構に対する批判である。国連システムは、トップダウンで本部主導型のアプローチを追求することがあまりにも多く、それがグローバリズムに対する反動に油を注いでいる。説明責任を果たさない官僚主義という批判は、単なるポピュリズム的主張ではない。国連本部の文化と国連が奉仕するべき人々の現実生活との間にある明白な乖離を反映している。
第3は、より厳しい体制批判である。国連は、タクールが「自己永続化システム」と呼ぶものになっており、本来国連が解決すべき問題を永続化させることによって、任務、予算、人員を絶えず拡大しようとするモデルに依存している。国連システムはあまりにも多くの場合、動きが鈍く、リスクを嫌い、効果よりもプロセスを過度に重視する。
これらの欠陥を認めることは、背信行為ではなく、変化のために不可欠な条件である。信頼できる国連擁護者であるということは、その欠点をはっきりと認識し、それらの原因を政略と組織病理の両面から理解したうえで、それでもなお、解決策は立ち去ることではなく再建することだと結論付けるということだ。国連を弁護する論拠は、過去の完全さの主張ではなく、国連再設計のみがもたらし得る世界的な公益である。
3. 懸念の大合唱: 再設計を求める声
新たなアプローチを求める声を上げているのは、国連の批判者だけではない。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、2026年1月に行った今後1年間の優先課題に関する演説で、単刀直入に「背景は混迷を極めている」と述べた。彼は、世界には「紛争や不処罰、不平等、そして予測不可能な出来事があふれている」と描写した。彼の警告は、「1945年の問題解決方法で、2026年の問題は解決できない。私たちの時代……を反映しない機構は、正当性を失ってしまう」と厳しいものだ。実際、その衰退はすでに目に見えている。
国連のシステムが限界点に達しているという認識には、大小を問わず各国の首脳が賛同している。フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領は、2025年9月に第80回国連総会で演説した際、「冷戦後の秩序は終わったが、新しい秩序がどのようなものになるかを私たちは知らない」と断言した。彼は、多国間主義と取り引き的な多極主義との間で緊張が高まっていると指摘し、「価値観に基づく現実主義」を呼び掛けた。基本的価値のために力を尽くすと同時に、いかに価値を追求するかについては現実的かつ柔軟な姿勢を維持するというものだ。
カナダのマーク・カーニー首相は2026年1月にダボス会議で演説し、ストゥブの表明を明確に引用して自身の主張を展開した。彼は、現在の状況を「世界秩序の分断」と呼び、ミドルパワー(中堅国家)に対し、ルールに基づく国際秩序が触れ込み通りに機能しているかのように装うのをやめ、共通の価値観と実践的レジリエンスに基づき協調して行動するよう促した。
このような見立ては、グローバルノースだけに限らない。元コロンビア大統領でノーベル平和賞受賞者であり、現在は “The Elders” の議長を務めるフアン・マヌエル・サントスは、「多国間システムを変える必要がある。なぜなら、第2次世界大戦後に達成され、取り決められたことは、今や通用しないからだ」と主張しつつ、解決策は「多国間主義を捨て去ることではない。それは自殺行為だ。そうではなく、モデルを変えることだ」と強く訴えた。ケニアのウィリアム・ルト大統領は、同じ国連総会で、国連が「信頼性と能力の極めて深刻な危機」に瀕しているという単刀直入な警告を発した。
表現は異なるものの、彼らの見方は同じだ。国連事務総長から北欧の大統領、G7首脳、グローバルサウスの代表者まで意見が一致するということは、国連改革の必要性が体制批判から主流の関心事へと移行したことを示している。この政治的好機は生かされるだろうか、無駄になってしまうだろうか。
この議論における中国の立場は、より複雑である。一帯一路構想、アジアインフラ投資銀行、上海協力機構は、自由主義的国際秩序の前提に対抗する並列的な制度構造の要素である。しかし、中国は一貫して、国連を中心とした多国間主義に賛同してもいる。グテーレス事務総長は、2026年1月29日の記者会見で、「中国は一貫して、多国間主義とその中心に国連があることを支持している」と認め、近頃習近平主席がその立場を再確認したと付け加えた。中国が2021年に打ち出した構想の一環であるグローバル・ガバナンス・イニシアチブは、世界秩序に対する独自の、しかし必ずしも相容れないとは言えないビジョンを反映している。より難しい問いは、国連が再設計された場合、特にそれがより人口を反映した、あるいは非国家主体を取り込んだ代表制度を模索する場合、中国のビジョンと折り合いをつけられるかどうかである。中国は、国際秩序の主たる単位という国家の立場を薄めるような構造に抵抗する強い理由がある。この緊張に真摯に対応することが、再設計の要件の一つである。
4. 財政危機: 存亡の脅威
2026年1月28日、グテーレス事務総長は193カ国の加盟国全てに対して、国連は財政破綻の差し迫った危機に直面していると警告した。その言葉遣いは直接的だった。「危機は深刻化しつつあり、プログラムの実施を脅かし、財政破綻のリスクをもたらしている。この状況は、近い将来さらに悪化するだろう」。これまでの傾向に基づくと「通常予算は7月までに尽きる恐れがある」と、彼は警告した。9月に予定されている総会を含む基幹活動が危うくなるシナリオである。
数字は厳しいものだ。国連分担金の未収額は、2025年末までに過去最大の15億6,800万ドルに達し、分担金総額の76.7%しか受領できていなかった。2026年度通常予算は、前年度より約7%削減した34億5,000万ドルで承認されたが、分担金を受け取らなければ執行することができない。未払いの通常予算分担金の95%以上が米国によるものだ。これは米国の国連分担金比率が約22%だからではなく、他の加盟国のほとんどが全額納入済みだからである。米国の未払い額は、2026年2月初めの時点で通常予算の分が約21億9,000万ドル、さらに平和維持活動予算が24億ドル、国連裁判所予算が4,360万ドルとなった。
危機は、グテーレスが「カフカ的サイクル」と呼ぶ状況によってさらに悪化している。現行の規則では、国連は分担金の未使用分を毎年数億ドルも加盟国に返金しなければならない。たとえその分担金が実際には全く支払われていなくてもだ。「われわれはカフカ的サイクルに陥っており、存在しない現金を返金することを期待されている」とグテーレスは記した。2026年冒頭でそれらの返金を行った結果、年度が始まってもいないうちに予算のかなりの割合がなくなり、手元の現金から差し引かれてしまった。
この財政危機は、意図的な離脱政策と切り離すことはできない。2026年1月7日、トランプ大統領は米国が31の国連機関を含む66の国際機関から脱退することを命じる大統領覚書に署名した。政権の2026年度予算案は、国連の通常予算分担金や大部分の任意拠出金を復活させるつもりがないことを示唆している。
同時にトランプ政権は「平和評議会」と称するものを立ち上げており、同評議会は2026年1月22日にダボスで正式に設立され、その憲章はトランプ大統領を無期限の議長に就任させ、ガザ地区を大きく超えて紛争解決の任務を負うと主張している。2月半ばの時点で、招かれた62カ国のうち約25カ国が署名したが、フランス、ドイツ、英国などの主要な自由民主主義国の多くは加盟を拒否した。この取り組みが明白な矛盾を乗り切ることができるかどうかはともかく、その重大さは制度の内実よりもそれが実際に存在していることにある。すなわち、国連の枠組みの外で説明責任の制約を受けることなく代替的な多国間機関を意図的に構築することが、今や政治的に実現可能になったという点だ。これは、制度的代替の概念を実証したものである。
本稿を書き終えた時点で、危機は制度的なものから規範的なものへとエスカレートした。複数の国の政府やアナリストらが有効であると評した外交的交渉が進行していたにもかかわらず、米国とイスラエルはイランに対する共同軍事攻撃を始め、安全保障理事会の承認を得ずに、また明確な解決の道筋すら持たずに公然たる戦闘を開始した。ロシアと米国は、いずれも安保理の常任理事国でありながら、今や両国とも安保理の承認なしに攻撃的軍事作戦を行っている。ロシアはウクライナで、米国はイスラエルとともにイランで。国連が守るはずであった規範の枠組みは、カーニーの言葉を借りれば、崩壊したのである。
5. 未完のプロジェクト: 再設計を訴える論拠
上記の批判を受け入れることは、国連が時代遅れになったと結論付けることではない。国連の理念は妥当性を維持しているが、その運営システムの多くはもはや目的に適合していない。組織を未完の政治的プロジェクトと見ることで、防衛的にも運命論的にもならない、より建設的な出発点に立つことができる。問題は、国連の設立理念が失敗したのではなく、何十年も前から明白だった問題に対処するためのレジリエンスや是正メカニズムがこの組織に欠けていたことだ。
国連憲章は、普遍性の原則を希求する一方で大国の特権を意図的に残した、1945年には野心的な実験であった。80年にわたって存続したということは、その適応性を証明するものかもしれないが、現在の課題は、創設者らの構想に見合う新世代の制度的イノベーションを実現させることだ。
歴代の事務総長は、調整と近代化に向けた取り組みを導入してきており、しばしば実際の行政面での改善をもたらした。しかし、これらの取り組みでほとんど取り上げられてこなかったことは、より根深い構造的緊張である。すなわち、普遍的な加盟制度と不平等な権力配分との間の隔たり、各国の自発的な政治的支援への依存、そして1945年に設計された制度を21世紀の現実に適応させることの難しさである。その結果は、組織としての活動は活発である一方で、政治的変革は十分に進んでいないという明確なパターンである。
再設計とは、国連を、理事会や委員会からなる固定的な階層組織という概念から脱却し、地球規模の問題解決のためのネットワーク化されたプラットフォームとして再設計し、国家、都市、企業、市民社会の多様な連合を招集できるようにすることである。機動性を取り入れ、イノベーションの追求においては時に失敗があることを受け入れ、国連の基本的価値を言葉だけの信仰ではなく運用可能な新時代の行動規範とし、改めて組織の基盤とすることである。国連の設立理念は今なお有効であるが、それらの理念を行動に移すための制度的な基盤は抜本的に再設計することが必要である。
6. 21世紀のストレステスト
再設計の必要性は、複数の構造的な圧力によって高まっている。地政学的な対立により安全保障理事会は機能不全に陥り、デジタル監視や情報の兵器化は新たな紛争領域を生み出し、不平等と信頼低下は集団的行動をより困難にし、人工知能は制度の対応が追い付かないほどのスピードで経済を変容させている。これらは単なる周期的な混乱ではなく、構造的な変革であり、ゆえに構造的な対応が必要である。以下では、これらの変革がすでに国連の能力や正当性を低下させつつあるいくつかの領域をマッピングする。
民主主義の後退は、2016年以降急激に加速しており、今や全ての地域の国家に影響を及ぼしている。主権平等の前提と法の支配を基礎とする組織は、これらの原則を国内で尊重しない加盟国の割合が増えていくとき、構造的に弱体化する。従って、再設計は単なる組織・制度上の課題ではなく、世界中における民主的ガバナンスのより広範な刷新と切り離して考えることはできない。
苦労の末に勝ち取った女性・平和・安全保障アジェンダの進展もリスクにさらされている。2000年に採択された安全保障理事会決議1325は、和平プロセスへの女性の参加と紛争における女性の保護のための基本的枠組みを規定した。以降、同決議に基づいて9件の安保理決議が採択され、国連による数十の現地ミッションの運用枠組みに盛り込まれている。現在の財政危機は、この体制を真っ向から脅かす。ジェンダー・アドバイザーは、予算決定プロセスで真っ先に削られるポジションであることが多い。女性の権利に焦点を当てたいくつかの国連機関は、厳しい資源制約に直面している。これらの能力が縮小したときに失われるものは、単なるプログラムの項目だけではない。一世代かけて成し遂げた規範的・実践的進歩も失われるのである。
離脱の影響は、すでに現場に表れている。マリでの国連ミッションが2023年12月に撤退を完了したとき、治安状況が急速に悪化した。元ワグネル・グループで現在はロシア国防軍の支配下で活動するアフリカ部隊が、その空白に入り込んだ。国連が去った後に残るスペースが中立的であることは滅多にない。紛争下にあり、安全保障理事会のいかなる決議によっても承認されていない条件で占領されているのである。
スーダンは、さらに殺伐とした様相を呈している。同国は今や世界最大の人道危機に直面しており、2,100万人以上の人々が重大な飢餓の状態にあり、1,100万人以上が国内避難民となっている。このような状況で、国連は、人道的アクセスの交渉や大規模な救援活動を調整することができる唯一のアクターである場合が多い。国連の存在が縮小しても、より有効な別のものに置き換わることはない。予算85億ドル、拠出金の早期確約も必要資金の20%に満たないという状況に直面している国連難民高等弁務官事務所が活動規模の縮小を余儀なくされることも、それがどこであれ同様の状況が展開する。
これらの状況を総合すると、この多国間システムが現在直面しているストレスがどれほど大きいかが分かる。国連は、ますます複雑化するグローバル課題に対処することを求められている一方で、その活動を支える政治的・財政的基盤が同時に弱体化しているのだ。
7. UN80とその背景: 必要、しかし不十分
UN80改革イニシアチブは、国連組織の効率性を高めるための真剣な取り組みである。任務の見直し、組織の再編成、より厳格な予算管理は、歓迎すべきものだ。しかし、それだけでは再設計の戦略にはならない。UN80は、より良い20世紀の組織になるための計画であり、21世紀にふさわしい計画ではない。
このイニシアチブは、発足以来大幅に進展している。2025年11月に発表されたUN80行動計画は、31のワークパッケージにまたがる87の行動を含む。提案された変更の規模はかなり大きい。2026年度予算には約2,900人の人員削減(2025年度比18.8%減)が盛り込まれており、すでに1,000人以上のスタッフが2026年初めまでに離職している。2026年における国連システム全体の資源は、2024年と比較して25%減少すると推定される。
残念ながら、UN80の構想は財政危機によって頓挫してしまった。改革イニシアチブとして構想されたものが、米国の資金拠出停止によって引き起こされた緊縮予算と次第に一体化してきている。2026年2月に“Just Security”に掲載された鋭い分析の所見の通り、このイニシアチブは「事実上の経費削減と業務合併になる恐れがあり、それは国連の中核任務を実行する実務スタッフに過重な影響を及ぼす」。人権高等弁務官事務所が受けた人員削減は16.7%で、開発や平和・安全保障を担う機関に課せられた削減率と比べて相対的に大きいものだ。事務所は「サバイバルモード」にあるという高等弁務官の警告が、その直接的な結果である。
2026年2月27に行われたUN80イニシアチブに関する事務総長のブリーフィングは、改革アジェンダの抱負と限界の両方を確認するものだった。ガイ・ライダー国連事務次長(政策担当)は、改革プロセスの複雑さは「加盟国にとって把握を困難にしている」と認めている。これは、イニシアチブの中核にある透明性の不十分さを認める告白である。同ブリーフィングで発表された“New Humanitarian Compact”は、より迅速でより責任ある人道支援を約束するものだったが、国際平和研究所の独立アナリストらはこれを「本質的というよりは表面的」であると評価した。
米国は、UN80に関する非公式のブリーフィングで人道支援改革を「歪曲と混乱をもたらすだけでしかない」と決めつけて否定し、いくつかの行動案を「全く実体のないもの」と評した。組織活動は顕著であるものの、政治的変革は不十分というパターンは、本稿の中心的議論を裏付けるものだ。
2019年に行われた国連常駐調整官制度の改革が示唆に富んでいる。中立性を高めるために国連開発計画(UNDP)から切り離された結果、調整活動における目に見える改善を実現した一方、慢性的な資金不足と予想を上回るコストに阻まれている。抜本的変更を提案し、開始するが、その抜本的変更に十分な資金を投入せず、結果を嘆き、そしてまた別の改革プログラムを立ち上げるという、お馴染みのパターンである。
資金制約のせいで実施できない改革は、改革ではない。それは単なる意図に過ぎない。
8. ミドルパワー(中堅国)の連合: プラットフォームか代替か?
大国間の合意形成がますます困難になっている状況では、多くの場合、ミドルパワーの連合が制度的イノベーションの推進力となり得ると指摘される。特定の課題に関して協力する柔軟な国家グループが国連に代わるものと見なされることもよくある。しかし、そのような解釈は幅が狭すぎる。適切に理解するならば、そのような連合はむしろ、多国間システム自体がどのように発展し得るかについてヒントを提供するかもしれない。
カナダのカーニー首相は、2026年3月5日にオーストラリア議会で演説した際に選択肢を端的に示した。「われわれのようなミドルパワーにとって今日の問題は、われわれの安全保障と繁栄を決定づける慣習を確立し、新たなルールの策定に寄与するか、あるいは覇権国が結果を左右するに任せるかだ」。そして彼は、戦略的非対称性について明確に述べた。「大国は強制できる。しかし、強制すれば、評判と経済の両面で代償が伴う。ミドルパワーは結集できる」。彼が挙げた力を結集する能力はまさに、再設計された国連が多国間システムに取り戻すことができる比較優位性である。
その結集する能力は、完全に公式制度の外で発揮された場合、構造的な限界に直面する。多国間の支持を得ずに結ばれた合意は維持が困難であり、戦略的信頼のみで形成された連合は世界的課題が必要とする普遍的正当性を生み出すことができない。再設計された国連は、気候行動、パンデミックへの備え、財政安定性に取り組む国家連合を、競争相手ではなく、より広範なグローバル・ガバナンスの枠組みにおけるパートナーとして扱うものとなるだろう。
最近の取り組みは、このアプローチの可能性を示している。世界貿易機関(WTO)の改革に関するオタワ・グループは、WTOの上級委員会が麻痺状態であるにもかかわらず、貿易ガバナンスに対する勢いを持続させようとしてきた。また、グローバル・メタン・プレッジは、公式な条約交渉の遅々としたプロセスの外で特定の気候目標について各国政府を動員している。いずれも普遍的コンセンサスが形成されにくい分野で、協力を進展させようとする各国の努力を反映している。
しかし、同様にこの枠組みの限界も明白である。気候変動やパンデミックへの備えに関する効果的な国際協力は大国の参加なしには起こりえず、そして大国は繰り返し、既存の制度が自らの利益にかなわない場合は代わりの枠組みを作り出す構えを見せてきた。中国の一帯一路構想、上海協力機構、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、自由主義的国際秩序の主要な前提に異を唱える並行的な制度的枠組みの要素を表している。地域機関や開発銀行は、多国間システムとの関係がどれほど不完全であっても、多国間システムを補完するものである。AIIBは、開発金融分野における世界銀行の制度的優位性に対抗している。「平和評議会」は、それとは本質的に異なる。それは、安全保障理事会の中心的義務である紛争解決と武力行使の承認に直接介入するものだ。米国のこの取り組みは、例外的なものではなく、より広範な傾向の一部である。
中心的な問題は、連合が国連と並行して生じるかどうかではない。すでにそうなっている。問題は、国連がこれらの取り組みを結び付け、正当性を与えるプラットフォームへと発展し得るか、あるいはより偏狭な利益を追求するために作られた制度によってますます置き去りにされるかである。ミドルパワー連合が提供できないものは、規範枠組み、普遍的な加盟体制、法的権限、制度的記憶である。それらは、一時的な合意を持続可能な世界的約束へと変容させるものだ。それこそが依然として国連に機能が残っており、それが国連を放棄するのではなく再設計を擁護する最も説得力ある根拠となっている。
では、実際に再設計を主導するのは誰か? 事務総長は議題を定めることはできても、それを執行することはできない。トランプ後の米国政権が問題であるが、その結果を条件として分析を行うことはあまりにも不確かで、用をなさない。原動力として最も考えられるのは、ミドルパワーの連合である。カナダ、北欧諸国、この多国間システムに強く関与するアフリカ諸国を代表するケニアと南アフリカ、そして日本、韓国、さらに特定分野についてはインドが挙げられる。これらの国々には、行動するべき制度上の立場があり、評判にかかわる利害があり、そしてますます強まる戦略的インセンティブがある。資金調達に関しては、大国1カ国の拠出への依存を減らしたハイブリッドモデルを構築するために、この連合が政治的援護を提供し、場合によっては初期資金を提供する必要があるだろう。
9. 再設計の枠組み:能力の構築
国連の再設計のために実際には何が必要かという問いは、能力の問題から始まる。再設計された国連は、その価値観を組織的能力へと転換しなければならない。下記のサブセクション9.1から9.5で5種類の能力を論じ、それに基づいてセクション10では戦略的優先事項を挙げる。それぞれの優先事項は、どの能力を強化するか、または能力を維持するために不可欠な政治的・財政的条件を整備するものである。
9.1 先見性
国連は、新たに出現する脅威を体系的に精査して、後手の対応から先手の対応に変わらなければならない。先見性は、組織の自己認識から始まる。自らの構造的弱点を是正できない組織は、グローバル・リスクの変化の動向を予測する態勢が整っていない。事務総長に直属し、各地域の政治担当部署と連携する常設の予測的分析機能を設けることによって、新たに出現する政治的、環境的、技術的リスクを体系的に精査し、事態悪化で選択肢がなくなる前に意思決定プロセスに早期警告を送り込むことができるだろう。
9.2 機敏性
現行のシステムでは、任務は山積していくが、それらが廃止されることはほとんどないため、活動範囲が拡大し、実効能力は低下していく。任務更新を迅速化し、体系的に期限付き見直しを実施し、もはや目的にかなっていないプログラムを廃止する意志を持つこと――これらがこの能力の実践である。。
9.3 ネットワーク化されたガバナンス
国連は、都市、民間部門、市民社会、地域機関などを単なる周縁的参加者ではなく真のパートナーとして引き込んだマルチステークホルダー連合を結集するプラットフォームとして機能しなければならない。「未来のための協定」のもとで初期段階の検討が行われたパートナーシップ枠組みを公式化することで、この能力を制度として具体化することができるだろう。
9.4 説明責任
国連は、加盟国だけでなくその決定に影響を受ける人々に対して説明責任を持たなければならない。現地ミッションに関して、任務の更新に合わせて独立した年次影響評価を実施し、全面的に公表することによって、国連の優先事項と影響を受ける地域社会のニーズとの間に根強く残るギャップを埋める助けとなるだろう。
9.5 学習
国連はすでに、平和維持活動、人道支援、開発プログラムの各分野において多くの教訓を得ている。困難なのは、教訓を認識することではなく、それらを組織的な変革として反映することである。レビューが実施され、報告書が書かれ、提案が承認され、しかし、政治的な関心が他に移ると、実施は立ち消えになってしまう。再設計された国連は、学習を運用条件に組み込まなければならない。すなわち評価結果に基づく管理層による対応を必須とし、現場における知見が体系的かつ継続的に政策見直しに反映されていく仕組みを構築するべきである。教訓を積み上げる組織とそれに基づいて行動する組織の違いは、手続き上の違いではない。組織としての意志の問題である。
これらの能力は、主権を守ろうとする加盟国や組織の特権を守ろうとする官僚機構からの抵抗が予想される。そこにおいてミドルパワーは、国連の再設計に必要な機運を維持することができる政治的アクターとして触媒的な重要な役割を果たす可能性がある。しかし、これらの能力のいずれも、安全保障理事会常任理事国5カ国の無条件の拒否権が無傷のままでは、十分に実現することができない。従って、次のセクションでは、能力とそれらが依存する政治的基盤の両方を取り上げる。
10. 再設計された国連の戦略的優先事項
上述の能力を活用するためには、具体的な戦略的優先事項に重点を置く必要がある。以下の6項目の優先事項は、三つの局面に分けることができる。すなわち、他のどの優先事項も達成できない制約要因となる財政的・政治的安定性(10.1および10.2)、組織的能力の再構築(10.3、10.4、10.5)、そして国連とそれが奉仕するべき人々を再び結び付ける民主的正当性(10.6)である。2024年9月に「未来サミット」で採択された「未来のための協定」を土台とする事項もあれば、それを大きく超える事項もある。しかし、これらの優先事項は単独で成立しているわけではない。それらは、国連憲章を支える原則への共通のコミットメントに依存している。
国連憲章の第2条4項に定める武力行使の禁止は、国際社会が共有する約束を最も明確に表現したものであり、引き続き各国の間の広範な(不均等であっても)遵守を要求している。これは、今なお地政学的分断を超えて広く正式に認められている数少ない原則の一つである。紛争の再燃と自制心の低下が著しい時代において、この原則を再確認することは言葉だけのものではない。根本を成すものである。国連を刷新または再設計しようとするいかなる取り組みも、国際秩序の実質的な条件として武力行使に反対する規範を強化することから始めなければならない。その基本線がなければ、集団的安全保障や保護する責任といったより野心的なドクトリンは、合意形成を図るどころか、分断をより深めてしまう恐れがある。
10.1 国連の資金調達制度を改革し、予測可能性と独立性を高める
加盟国は、国連の資金調達方法が持つ構造的脆弱性に取り組まなければならない。現行の制度では、たった1カ国の加盟国が法的に義務付けられた拠出金を停止することによって組織を機能麻痺寸前まで追い込むことができる状況であり、これは単なる管理上の問題にとどまらない。安保理の拒否権問題をめぐる議論と同等の真剣さをもって取り組むべきである。
同様のことが、安全保障理事会と総会の権限のバランスにも当てはまる。再設計された国連は、拒否権乱用がもたらす損害を単に軽減するだけではなく、安保理が機能しないときには、総会が行動を起こすことができる力を強化するものとなるだろう。「平和のための結集」決議で確立されたメカニズムが、すでに手続き上の道筋を提供している。欠けていたのは、常任理事国が集団的安全保障を犠牲にして自己利益のために行動した場合に、この道筋が当然のこととして用いられるという、十分な政治的意志に裏打ちされた期待であった。
当面の最優先課題は、資金源のない任務付与が実際の実施能力を構成するかのような虚構を維持するのではなく、現実的な資金予測に立って組織の取り組みを調整することである。中期的には、国連は基幹的機能については任意拠出金への依存度を減らす、ハイブリッド型の資金調達モデルに移行するべきである。穏当な代替メカニズムとしては、多国間金融機関で採用されているものと類似の適切な規模の資金調達メカニズムを導入し、平和構築や人道支援の調整については予測可能な資金調達を行うことが考えられる。また、特定のデジタルサービスや頻度の高い金融取り引きに対する革新的な課税や少額手数料によって支えられる国連寄付基金を設けることで、国連の不可欠な機能を地政学的圧力から一定程度保護することができるだろう。
政治的な障害は現に存在する。このような変更には総会の承認が必要であり、新たな国際的な資金調達メカニズムを警戒する加盟国からの抵抗に遭うだろう。そのような制約があることこそが、政治的議論をいつまでも先延ばしするのではなく今始めるべき論拠となるのである。
10.2 大量殺戮の事案については拒否権行使を控えるという常任理事国5カ国の正式な約束を確保する
加盟国は、「未来のための協定」署名国の主導で、安保理機能不全の悪影響を緩和する手続きの道筋を設ける一方、拒否権行使の自制という規範を強化しなければならない。拒否権は、1945年に大国が多国間システムの外で行動するのではなく内部に留まるようにするために妥結された憲章交渉の結果であり、いかなる真剣な改革戦略もその廃止を近い将来政治的に実現可能なものとして扱うべきではない。
すでに2件の取り組みが、そのような自制の土台作りをしている。120カ国以上の加盟国によって承認された「説明責任・一貫性・透明性(ACT)グループ」の行動規範は、常任理事国に対し、ジェノサイド、人道に対する罪、または戦争犯罪を伴う状況については拒否権を行使しないよう求めている。フランスとメキシコによる取り組みも、同様の原則を推進している。それと並行して、総会決議377「平和のための結集」決議は、安全保障理事会がその責任を遂行できない場合、総会が行動する手続きを定めている。これらの文書が、すでにシステム内部に存在する。欠けているのは、安保理が行動しない場合に当然のこととしてそれらが発動されるという政治的期待である。
しかし、自制は政治的価値はあるものの、実践上は不十分であることが、近頃の経験で示された。安全保障理事会報告書の分析で、近年、年間の拒否権行使の回数が過去数十年で最高レベルになっており、その中には大規模な民間被害を伴う紛争に関して拒否権が繰り返し行使された例も含まれることが示された。これは、自制を徐々に内在化していくシステムではない。逆に、拒否権行使に伴う政治面・評判面のコストがあまりにも小さく、重大な危機の際に行動を改めさせることができないシステムの表れである。
リヒテンシュタイン公国が主導して2022年4月に国連総会で採択された決議(A/RES/76/262)は、拒否権が行使された後に必ず正式な討論を行うことを義務づけ、政治的説明責任を求める追加的手段を導入した。この要件は実質的というよりは手続き的であるが、拒否権の行使は全加盟国の目に見える政治的代償を伴うべきであるという原則を確立するものである。
拒否権自体の修正に関する構造改革案も依然として出されており、拒否権の発動は1カ国ではなく2カ国の反対票が必要とする案などがある。しかしこれらの提案は、国連憲章の改正には安全保障理事会の同意を必要とするという憲章第108条のもとで、ほぼ克服不可能な障害に直面している。この提案の価値は、直ちに実現可能かどうかではなく、自制の規範が暗黙のままにしていることを明確に示していることにある。すなわち、1カ国のみによる無条件の拒否権行使は、安保理が掲げる目的とますます矛盾するようになっているという点だ。
また、この問題は公式な拒否権発動数が示す事実より深刻でもある。安全保障理事会報告書に記される通り、拒否権発動の脅しが予想されるために決議案そのものが議題に取り上げられない、あるいは内容が大幅に骨抜きにされる場合は、いわゆる「ポケット拒否権」が作用していることになる。こののような隠れた強制力は、測定が困難であるが、同じように重大な影響をもたらすことが多い。なぜなら、投票が行われもしないうちから安保理の運営環境を左右するからである。従って、本気で再設計アジェンダを策定するなら、拒否権の表だった行使だけでなく、行使の脅しによる隠れた拒否権票も取り上げるべきである。
近年の出来事は、改革の緊急性を強調している。大国が安保理の承認なしに軍事行動を実施する場合、「ACT行動規範」、フランス・メキシコ間のイニシアチブ、「平和のための結集」メカニズムは、補完的な統治ツールではなくなる。それらは、麻痺した安保理と、大国の軍事行動が完全に多国間監視の外で進められる事態との間に残された最後の手続き的防壁となる。
10.3 公式のハイレベル国連デジタル理事会を設立する
加盟国は、デジタルインフラのガバナンスが断片的であることに対処するために国連デジタル理事会を設立するべきである。データ、アルゴリズム、技術標準に関する権限はますます経済競争力、政治的影響力、軍事能力を左右するようになっているが、多国間システムは制度としてこれに対応するには不十分である。
「未来のための協定」の一環として採択された「グローバル・デジタル・コンパクト」は、デジタル協力の強化に向けた重要なステップである。これらの取り組みは、共通の知識基盤を確立するために役立つが、急速に進化するデジタルシステムに対する持続的な統治を敷く能力のある制度的メカニズムを提供するまでには至っていない。デジタル理事会には、各国政府、民間部門、市民社会の代表を含め、常設の技術事務局の支援を受け、拘束力のある助言権限を発揮するべきである。初期のアジェンダは、自律型兵器システムを規制する規範、公的意志決定におけるアルゴリズムの透明性、監視技術の国家利用に関する最低限の基準に重点を置くべきである。
10.4 専任の国連平和構築サービスを創設する
国連事務局は、新設された平和構築・平和支援事務局を足場として平和構築に特化した専門部署を創設するべきである。平和構築は、最も頻繁に挙げられる国連の優先事項の一つだが、最も制度化されていない機能の一つでもある。行政上の統合は専門サービスの確立と同義ではない。新設された事務局は、さまざまな機関、基金、プログラムにまたがる活動を調整するために必要な財政的自律性、人員の層の厚さ、制度的権限をまだ備えていない。
専門の国連平和構築サービスは、活動予算、民間の平和構築専門家に対する専門的なキャリアパス、そして、国連開発計画(UNDP)、他の国連機関、地域プログラムに分散する取り組みを調整するに足る強力な権限を確保し、紛争予防と紛争後の復興が一過性の政治的注目ではなく持続的な専門的配慮を受けることを可能にする真の卓越した専門性を備えたシステムを提供するだろう。
10.5 未来世代担当特使を遅滞なく任命する
事務総長は、「未来のための協定」に定める未来世代担当特使の任命をこれ以上遅滞なく進めるべきである。多国間機関は構造的に、差し迫った危機への対応に重点を置いている。外交的関心は、長期的課題よりも緊急の課題に引き寄せられており、その結果、気候不安定性、技術的混乱、制度の脆弱性といったシステミック・リスクは、日常的な意思決定では常に過小評価されている。
役職が発揮する効果はその権限によって決まる。任務は、象徴的な擁護に留まらず、主要な国連の政策イニシアチブを再検討する資格を盛り込み、長期的リスクの影響を強調し、制度の決定が次世代への責任に沿ったものかどうかを公に報告しなければならない。
10.6 国連市民会議を試行する
加盟国は、グローバルな意思決定と市民参加との間で拡大する隔たりに対処し始めるため、国連市民会議の試験的開催を承認し、資金を拠出するべきである。「未来のための協定」では包摂的統治を強調しているが、国連にはまだ、一般市民がグローバルな議論に参加できるような有意義なメカニズムがない。
市民会議は、国レベルではその価値が実証されている。アイルランド、フランス、カナダでのプロセスでは、複雑な問題について熟議による筋の通った提言が策定された。これらのモデルを世界レベルに適応させることは、慎重な設計が必要ではあるものの、完全に実行可能である。市民会議の任務は諮問的なものに留めるべきであり、その正当性の源泉は公式の権限ではなく代表性と透明性である。議論は公開とし、独立した立場の専門家による解説を受け、世界の人口バランスを確実に反映するために層化抽出法によって実施する。
上記の優先事項のほかにも、注目するべき二つの分野がある。2026年後半と想定される次期総長の任命は、長年にわたって常任理事国5カ国に支配され、他の加盟国や市民社会の意見に対してほぼ閉ざされてきた選出プロセスを改革する直近の機会となる。より透明性の高い、能力に基づくプロセスは、それ自体が制度再設計の行為といえる。国際保健ガバナンス能力の低下は、COVID-19パンデミックの際に顕在化し、近頃の世界保健機関への大幅な資金拠出停止によっていっそう悪化しており、これに特化した制度的対応が必要だが、UN80イニシアチブではこれまでのところ提供されていない。
11. おわりに: 再設計か、的外れになるか
国連は、もはや先送りできない決断に迫られている。今後も漸進的調整という道筋をたどり続け、根本的な設計を変えないまま効率性の改善を重ねるか、あるいは自らを再設計する決意を固め、創設者らの大望に沿い、彼らのビジョンを新世紀の要請に合わせて適応させるかである。
2026年初めの出来事は、危機を紛れもないものにした。再設計は、単なる組織的取り組みでは成功しない。国家間で一定レベルの共通の自制を回復できるかどうかにかかっており、それがなければ最も慎重に設計された改革も維持に苦心するだろう。事務総長は、2026年半ばまでに深刻な流動性危機に陥ることを警告している。国連にとって最大の拠出国は、何十もの国連機関から脱退し、対抗する制度を構築し、安全保障理事会の承認なしにイランへの攻撃を行い、明確な法的枠組みも解決に向けた確かな外交的道筋もないままに公然と戦闘を開始した。何千人もの職員が削減されており、その一方で彼らが対処するために雇用された危機は悪化している。
今日の国連の根本的弱点は、単なる資金不足または政治的制約ではない(どちらも事実ではあるが)。それは、正当性が主に国家を通して確保され、権力がおおむね公式な国家間ルートを通じて行使され、外交が信頼され、はるかに強靭な財政的・政治的基盤がなくても集団行動を維持できるという世界をいまだに前提としている制度設計である。そのような世界は過ぎ去った。今やリスクは国連の権限の範囲よりも速いスピードで進展する。権力は、国家、企業、ネットワーク、プラットフォームの間に分散している。しかし、国連は依然として、そうした現実が存在しないかのように、資金を受け、権限を与えられ、評価されている。
セクション10で論じた3段階の枠組みは、具体的な道筋を示している。資金調達の改革と大量殺戮の状況における拒否権の自制によって財政的・政治的基盤を安定させ、セクション9の五つのサブセクションに挙げた制度能力を構築し、市民参画メカニズムを通して民主主義の正当性を回復することである。加盟国は、財政構造と拒否権について取り組まなければならない。事務局は、能力を構築しなければならない。市民社会は要求を支持し続けなければならない。
再設計された国連の資金調達は、任意拠出や未払いに伴う毎年の不確実性ではなく、予測可能で法的拘束力を持つ基盤に依拠するものとなるだろう。安全保障理事会は、ジェノサイドや大量殺戮に直面したとき、1カ国だけで永遠に集団行動を阻止することはできないという原則によって規律されるだろう。フィールド任務は、その効果によって、手順の遵守ではなく、民間人の保護、避難民の帰還、和平合意の維持によって評価されるだろう。国連幹部は、決して形成されないかもしれないコンセンサスを待つのではなく、目の前のエビデンスに基づいて行動する制度的勇気を備えるだろう。
カーニー首相がオーストラリアの議会で述べたように、「これは多国間主義からの後退ではない。その進化だ」。本稿が再設計を訴えるのも、これと同じ考え方である。単なるスローガンや、内部の組織再編の新たなサイクルを繰り返すことの言い訳としてではなく、多国間主義が依然として機能する条件を再構築するための実践的な取り組みであるということだ。選択肢は国連を保全するか放棄するかではない。選択肢は、現に存在する世界のために国連を再設計するか、過ぎ去った世界秩序の記念碑とするかだ。それは、加盟国がこれ以上先延ばしできない決断である。
ジョーダン・ライアンは、戸田記念国際平和研究所の国際研究諮問委員(TIRAC)である。これまでに、国連事務次長補を務めたほか、リベリアで事務総長特別副代表および国連常駐調整官(UNMIL)、ベトナムで国連常駐調整官および人道調整官、その他の紛争後地域で数々の現地任務に就いた。また、カーターセンターの平和プログラムの元副代表であり、“Diplomats Without Borders”の設立メンバーでもある。彼の研究は、平和構築、民主主義のレジリエンス、脆弱で分断された社会におけるデジタルパワーのガバナンスに重点を置いている。多国間制度の改革、制度設計、技術と民主的統治の交差に関する発表を広く行っている。